新型コロナウイルス感染症の影響により、社会やビジネスが大きく変わろうとしている中、一時的な売り上げの低迷により、コストの削減に着目している企業も多いのではないかと思われます。
そこで今回は、企業がコスト削減を行うにあたり、気を付けたいポイントを2回にわたりお届けしたいと思います。
1.なぜコスト削減が必要なのか?
一般的に、コスト削減に取り組む企業の理由としては、
売上の伸び悩み・利益の縮小 = 後ろ向きな取り組み
このように捉えるところが多いようです。
一方で、実際にコスト削減に積極的に取り組んでいる企業の多くが、
売上アップ・利益が出ている = 前向きな取り組み
このように捉えており、益々業績が向上しているのです。
本来のコスト削減の意義とは以下のように考えます。
コスト削減 → 利益増大 → 新規投資 → 企業成長 |
つまり、コスト削減とは企業の成長に欠かせない経営手法のひとつである、という認識をしていただきたいと思います。
2.コスト削減の対象コストとは?
企業活動におけるコストは、原価・販売管理費・営業外費用・特別損失における勘定科目に分類されます。
しかし、コスト削減における取り組みには勘定科目ごとの分類は不要、つまり会計上のコスト分類は必要ありません。
3.コスト削減がうまくいっている企業の特徴
顧問先の支援を行う中で、コスト削減がうまくいっている企業には不思議と特徴があるのでまとめてみます。
◆うまくいっている企業の特徴①
✓会議室、打ち合わせスペースが整理整頓されている
✓挨拶がしっかりしている
✓電話応対がしっかりしている
・・・つまり、基本的なことが出来ていない会社はコスト管理も甘く、無駄の多い傾向にあるのです。
◆うまくいっている企業の特徴②
✓書類(帳票)が整理整頓されている
×誰がどこに何を保管しているのかわからない
✓事業部門(特に営業、製造)と管理部門(総務・経理・人事)の役員間の関係が対等である
×管理部門役員が他部署にものを言えない
◆うまくいっている企業の特徴③
✓役職と業務の分担が明確に規定されている
役職例:役員 部長 課長 主任 一般社員
ダメな会社は、役員や部長が一般社員の仕事(業務、作業)に没頭してしまっており、役職者がしなければいけない意思決定や対外折衝、部門間調整などが後回しになってしまっています。
4.コスト削減の大きな間違い
まずは以下の①②のように、明確な削減目標の設定が大事になってきます。
①削減額の目標 ▲〇百万円
②削減率の目標 ▲〇%
よくある目標設定として、昨年対比で設定されがち(予算策定)ですが、これは大きな間違いです。
削減額の目標の設定で気を付けなければならないことは、明確な根拠がない場合免責(達成できない言い訳)が発生してしまうこと、また、顧客への悪影響や社員の意欲低下などが懸念される点が挙げられます。
また、一般販売管理費を売上対比目標(売上対比〇%以内など)に設定してしまうと売上に比例しない固定費が含まれてしまうこともあります。
そして、売上を上げるための戦略的経費である広告宣伝費や接待交際費などを抑制することで目標を達成する傾向が強くなり、営業部門のモチベーション低下、業績悪化や目標未達の際に営業部免責になってしまう可能性もあります。
他にも、〇〇費は売上対比で〇%以内に、などと費目を限定すると、管轄部門も限定され、自部門だけのやらされ感が出てくるなど社内全体の前向きな取り組みとしての認識がなくなる傾向にあります。
5.ほとんどの企業ができていないこと
コスト削減を進めていく場合に、すべてのコストを網羅的に点検しておらず、取り組みやすいコストや支払額が大きいコストのみなど一部のコストにしか着目しておらず漏れているケースが見受けられます。
これは、コストの分類や整理整頓ができていないことが原因ですが、すべてのコストを点検することで大きな成果をあげるケースが多いです。
次に挙げられるのが、やったらやりっぱない状態できちんと社員にフィードバックを行っていない企業が多いという点です。
✓効果検証をそもそも行っていない
✓結果を社員にフィードバックしない
✓コスト削減の成果を評価しない(特に管理部門)
✓せっかくやったのに、結局どうだったの?
✓またどうせやらされるから、適当にごまかしておけ
上記のように、中途半端な状況で放置される恐れがあるので気を付けていただきたいと思います。
また、このコストには手を付けられないという思い込み、つまりコストの聖域についても考えておく必要があります。
例えば、社長の知り合いだからやめておこうなど地雷を踏むことを社員は避ける傾向にあります。
さらに気を付けなければならないのは部署が聖域化していることです。
例えば、ITコスト(情報システム部)や広告コスト(販売促進部)は、年度予算が確保できればその後は実行して消化するだけ、という考えに陥りやすいので、コスト削減に着手する場合にはチェックが必要です。
6.コスト削減で必要なルール
コスト削減を進めるうえで必要なルールをまとめてみます。
(1)全社で取り組む
コスト削減は管理部門の仕事、と捉えがちですが、管理部門(担当者)を事務局として全社を巻き込んで取り組むことが重要です。
会社の成長のために必要な取り組みであるということを全社員に説明し意識付けを図ることが大切となってきます。(≒利益だけの追求)
(2)削減案実行の決定者を決める
全社でコスト削減に取り組むにあたり、多くの意見を吸い上げるとともに、何を誰が決定するか、を予め決めておく必要があります。
①経営者(社長)が決定
✓投資に関すること(設備投資など)
✓複数部署が関連すること
②事業部門長(管轄役員)が判断
✓自部門で完結する事
③現場責任者(課長など)が判断
✓すぐにやればコスト削減に繋がること
(3)やめることを決める
以下のように不要なコストは即やめることが望ましいです。
✓前任者からの申し送りで、意味もなく支払っているコストなども多数の事例有り
✓やめても影響度の低いコスト
例)不要な会費、接待交際費の上限、意味のない保守費用、使用頻度の低い営業車、携帯電話など
(4)免責を与えない仕組み
削減の進捗を確認する際に、必ず数値でのフィードバックを行い、免責を与えない(=出来ない言い訳をさせない)状況を作ることが大事になってきます。
例えば以下のように数値で明確に表す仕組みが大事です。
✓単位あたりのコストを提示
例)
コピー代:部門ごとに一人あたりのコストを比較
営業車両費:一台あたりのトータルコストなど
今回はここまで
いかがでしたでしょうか。
コスト削減と一言で言っても、ポイントを押さえて進めていかなければ、良い効果はのぞめません。
次回はコスト削減の手法などをお伝えしていく予定ですのでどうぞお楽しみに。
文:キャッシュフロー経営講座 認定講師 山口 真