「粗利」といった用語は仕事で耳にする機会の多い言葉ですが、その意味は言葉からはイメージしにくく、しっかり理解できている人は多くありません。
今回は財務諸表(決算書)のうち、損益計算書の各利益について解説します。
損益計算書に記載される6種類の利益
損益計算書は1年間の売上から費用を差し引いて、いくら損益が出たのかを示す書類です。
損益計算書には利益と呼ばれるものが6種類ありますが、その中でどの利益が粗利と呼ばれるものなのかご存知でしょうか。
6種類の利益とは・・・
売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益・期末繰越利益剰余金
この中で売上総利益と呼ばれる利益が粗利に当たります。
「粗利」とは、売上高から材料費、商品仕入高などの売上原価を差し引いた後に残る利益です。そして「粗利率」とは売上に対する粗利の割合です。
・粗利(=売上総利益)=売上高-売上原価(材料費や商品仕入高など)
・粗利率=(粗利/売上)×100
キャッシュフロー経営講座では、この売上総利益こそが「自由に使えるお金」であり、最も大切な利益であるということをお伝えしています。
粗利
では何故この粗利が最も大切なのでしょうか?粗利は経営管理においてとても重要な指標の一つです。
売上が増加しても売上原価がそれ以上に増えれば利益は減少し、いずれ資金が枯渇します。
会社を安定的に経営するためには「粗利」の増加を目指す必要があります。粗利率は高いほど好ましいのですが、業種によってかなり差があります。
中小企業基盤整備機構が運営する「J-Net21」の業種別開業ガイドから様々な業種の損益イメージから粗利率の参考数字がわかるので、参考にしてみてください。
・ラーメン店・・・66%
・コインランドリー・・・64.6%
・コンタクトレンズ販売店・・・53%
・インテリア用品店・・・27%
・再生資源回収業・・・25%
粗利率の計算において、販売や小売業などと製造、建設、運送業では考え方が少し異なります。
計算の基礎として、販売業では仕入額をもとに売上原価を算出しますが、製造や建設、運送業では製造原価をもとに売上原価を算出します。
小売業については仕入れた商品を販売するため仕入額が売上原価となりますが、製造や建設、運送業では実際にかかった人件費や材料費などを合算し原価計算を行う必要があるのです。
このように適正な粗利管理を行うためには、決算書の原価に入れるべきコストが的確に入っているのか、逆に本来であれば販売管理費に入れるべきコストが売上原価に入っていないかを確認することが欠かせません。
ではここから少し難しいかもしれませんが、重要な部分を説明します。
粗利を考える上で欠かせない変動費・固定費
会計には「財務会計」と「管理会計」があります。
財務会計は外部の利害関係者への報告を目的としており、管理会計は意思決定や業績評価に役立てるための社内向けの会計です。
前段で書いた「粗利」とは財務会計における損益計算書の一つの利益です。
粗利を検討する上で必要なものが「変動費」と「固定費」になります。
コストは、売上が増えるにしたがって増加する「変動費」と、売上にかかわらず発生する「固定費」に区分できます。
変動費とは、建設業で言うと建築資材など材料にかかる費用です。
現場ごとに日給で雇用するなどの現場従業員給料手当は、売上の増減にかかわらず発生するコストで、固定費となります。
売上に従ってコストが増減する項目を変動費、増減しない項目を固定費として取り扱います。
変動費・・・売上が増えれば増えるコスト(材料費など)
固定費・・・売上が増えても増えないコスト(人件費など)
このように、売上原価は変動費と固定費で構成されますので内容を把握し管理することが重要です。
営業利益とは
営業利益は、売上総利益(粗利)から販管費(販売費及び一般管理費)を引いて算出する利益です。
販売員や事務員の人件費、事務所の賃借料、広告宣伝費などが含まれます。
営業利益の計算には、本業以外で得た利益や突発的に発生した事象による利益や損失は含まれません。本業以外の利益とは、利息や保険金の受取、突発的事象には事故や災害の被害による損失、使わない車両を売って得た利益などが該当します。
営業利益は各段階利益のうち、銀行から融資を受ける際に最も注目される利益です。
なぜなら、定常的に発生する収益と費用だけが含まれることから「会社の本業による収益力」を表すのに適した指標だからです。
まとめ
ここまでの解説で何故最も大切な利益が売上総利益なのかご理解いただけたのではないでしょうか。
つまり売上総利益が減少すればすべての利益が減少するということです。
売上を上げることに目が行きがちですが、経営改善で最初に取り組むべきなのは、自由に使えるお金である売上総利益(粗利)の目標値を設定し、適正な粗利が確保できているか、できていない場合は何を改善すれば良いのか、従業員を巻き込んで毎月確認することが大切です。
最後までお読みいただきありがとうございました。