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成長戦略会議と中小企業経営

令和2年10月16日に政府は新たに「成長戦略会議」を設置しました。

議員には、有識者委員として慶応義塾大学名誉教授でありパソナグループの会長でもある竹中平蔵氏や、国際政治学者の三浦瑠麗氏、小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏ら8名が起用されています。

デービッド・アトキンソン氏

さて今回はメンバーの一人であるデービッド・アトキンソン氏についてご紹介いたします。

デービッド・アトキンソン氏はこれまで菅義偉首相に近い存在として観光や経済政策を中心に助言をしてきたブレーンの一人です。

アトキンソン氏はオックスフォード大学を卒業後、アンダーセン・コンサルティング(アクセンチュアの前身)やソロモン・ブラザーズに勤務し、1990年ごろに来日。

1992年にゴールドマン・サックスに移ってアナリストとして活動し、バブル崩壊後の日本の銀行に眠る巨額の不良債権を指摘しました。

ほどなくして不良債権問題が顕在化し、その名を高めた存在として知られるようになったのです。

何故菅首相が成長戦略会議にアトキンソン氏をメンバーとして加えたのか。

起用は首相の意向によるもので、「インバウンド(訪日外国人客)の増加政策など、アトキンソン氏の主張は当たっている。首相も信頼している」と政権幹部も話しています。

実際、首相が官房長官だった昨年末に打ち出した「日本各地に世界レベルのホテルを約50ヵ所新設」とのアイディアはアトキンソン氏の進言によるものでした。

首相の持論である最低賃金の引き上げも、同氏の提言と一致しています。

首相は周囲に「彼の考えは私の考えにとても似ている」と話しているそうで、首相の路線を会議での議論に反映させる狙いがあると言われています。

今後の日本の展望をどう捉えているのか

日本政府から信頼を得ているアトキンソン氏は、今後の日本の展望をどのように捉えているのでしょうか。

同氏の著書「国運の分岐点」では、日本に過剰な数がある中小企業が生産性低下の大きな要因だとし、そのために最低賃金を引き上げて経営力と競争力がない中小企業を淘汰・統合するなどの政策を行い国際競争力の強化を図るべきであると提言しています。

更に、過去のルールに囚われている日本の中小企業経営者が、「合理的判断」で新しいルールに反対すること、そして彼らの考えている利益というものが、いまの日本の国益と真っ向から対立をしていると述べています。

働き方改革関連法案による同一労働同一賃金や消費税増税、最低賃金法による賃上げ、新設されたデジタル庁ではIT化やサイバー対策を推進していくことでしょう。

日本政府が中小企業を減らそうとする方針であることの賛否はもちろんありますが、中小企業が早急に財務体質を改善しキャッシュを蓄えておく必要性は増している、ということは間違いないのではないでしょうか。

金融モラトリアム法

キャッシュフロー経営講座では、企業が何のために存在するのかという問いに対し、従業員の所得向上と社会貢献、すなわち利益を上げて税金を納めること、と定義しています。

その実現のためにまずは自社の財務を分析できる力を身につけること、そして、儲かる仕組みの原理原則を知ることが欠かせません。

また、少なくとも運転資金の一年分はキャッシュを蓄えておかなければならない理由があります。

それは、金融モラトリアムはもうない!ということです。

金融モラトリアム法はリーマン・ショック後に制定された法律で、正式名称は「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」です。

リーマン・ショックを契機に中小企業の資金繰り支援のため、2009年12月、当時の亀井静香金融担当大臣主導で立法化されたモラトリアム法。

これは、金融機関が融資先に対する返済猶予や金利減免などのリスケジュールを通して、中小企業の返済負担を軽減するものです。

モラトリアム法は2013年3月末で終了しましたが、実質的には同法は継続されてきました。

法的根拠を失ったにもかかわらず、終了後も申込は500万件を超え、実行率はなんと9割を超えています。

その結果、旧来のビジネスモデルを温存したままの救済策が企業の新陳代謝を阻み、ゾンビ企業の増殖を招いてしまったのです。

「リスケ先の6割程度は業績が改善せず、正常先債権への格上げは4割にも満たない」(大手信金審査部)のが実状で、水面下で“倒産予備軍”が着実に膨れ上がっているのは間違いないと言えます。

企業倒産はリーマン・ショック以降長らく減少傾向をたどってきましたが、実はこれまで経営者が諦めない限り、企業はなかなか潰れませんでした。

それは景気や業績の回復もありますが、何と言っても借入金の返済猶予など金融機関の手厚い支援に尽きます。

まとめ

日本政府が中小企業の削減により一層舵を切るとするのであれば、今後新たな感染症や首都直下型地震、政界恐慌などが起きた時にはもう金融モラトリアムはなく、再建することが不可能となる企業が多発することを想定しておく必要があるのではないでしょうか。

儲かる仕組みの原理原則や自社の財務を分析する力を当経営セミナーでもお伝えしています!

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