先週、「キャッシュフロー経営とは」をテーマにお送りいたしましたが、もうお読みいただけましたでしょうか?
今回は前回の続きからお話を始めていきたいと思います。
会計とキャッシュのずれ
では早速、前回の最後でお伝えした“会計とキャッシュのずれ”が起きる主な4つの要因について詳しくご説明していきます。
1.借入金の返済
2.掛けによる取引
3.減価償却によるずれ(固定資産)
4.在庫
1.借入金の返済について
まず認識していただきたいことが、借入の返済は費用にはならない、ということです。
例えば、A社が毎年100万円の返済を約束して500万円の借り入れを行ったとします。
その後、毎年100万円を5年間返済するので、毎年100万円の出金がありますが、借りているものを返しているだけなので損益計算書の費用には計上できません。
損益計算書上で利益が出ていると思っていても、実際のキャッシュは100万円の返済の部分が出ていっているということになるので、会計とずれが生じるのです。
2.掛けによる取引について
売り手側であるA社が、売上を認識するタイミングは「入金があったとき」ではなく、「商品を引き渡したとき」になります。
また、買い手側が費用として認識するタイミングは「振り込みを行ったとき」ではなく、「商品を受け取ったとき」となります。
このように、損益計算書では“発生主義”を原則とするため、入出金の有無に関係なく計上しなければならないため、会計とキャッシュフローにずれが生じます。
3.固定資産について
こちらについては「減価償却によりずれが生じる」ということです。
例えばA社が、固定資産となるパソコンを40万円で購入したとします。
それにより40万円の現金支払いが1度に発生しますが、会計上では「減価償却」として処理しなければなりませんので、減価償却期間が5年だとすると、40万円を5年間にわけて費用計上しなければならない、ということになります。
毎年の費用の算出は以下の式です。
【計算式】
パソコン代(40万円)÷ 使用年数(5年)=毎年費用計上する金額(8万円)
このように、購入した年の実際の出費は40万円ですが、会計上は8万円しか計上されませんので、会計とキャッシュフローにずれが出てくるというわけです。
4.在庫
在庫については、いずれその在庫品が売れた場合に利益となります。
つまり、単に消費されるものではなく、いずれ換金できるものと捉えられます。
ただしここで気を付けなければいけないのは、売れるまでの間は費用として計上できずに資産として計上しなければならないということです。
つまり、100万円分の在庫を仕入れただけでは、その時点では全額を費用として計上できず、
資産(まだ売れていない分)+ 経費(売れた分)= 100万円
となるため、会計とキャッシュフローにずれが生じるのです。
今回のまとめ
このような要因から、会計上は黒字であったとしても資金がショートする可能性もあることを認識しておく必要があります。
キャッシュの流れを予測し、現状をリアルタイムで把握することが重要になってくるのです。
そして、それを把握するために重要となるのがキャッシュフロー計算書という帳票や資金繰り表となります。
キャッシュフロー(CF)計算書については、上場企業をはじめとした、いわゆる有価証券報告書提出企業には申告する必要があるのですが、中小零細企業には作成する義務も申告する必要もないため、目にする機会が少ないかもしれません。
しかしよく考えてみてください。
上記のように会計とキャッシュにずれが生じることや、上場企業におけるキャッシュフロー計算書作成義務があるということを踏まえると、実はこのキャッシュフロー計算書はすべての企業にとって非常に重要な帳票であるということがおわかりいただけるのではないでしょうか。
以上のことから、キャッシュフロー計算書や資金繰りについて毎月確認されることを、我々キャッシュフロー経営推進全国会では皆様に強く強くお勧めいたします。
次回以降は、キャッシュフロー計算書の見方や、資金繰り表の作成方法についてもお話していきたいと思いますのでどうぞお楽しみに。