皆様こんにちは。
キャッシュフロー経営講座認定講師の山口です。
安全性分析の必要性
皆さんは黒字倒産という言葉を聞かれたことがあるのではないかと思います。
よく考えると不思議な言葉ですよね。
黒字なのになぜ倒産するの?
つまり黒字で売上が伸びている会社であっても財務経営状態が良好とは限らないということです。
我々は企業の決算書を見る際にまずは、企業の安定性指標となる安全性分析を行います。
企業経営においてもこの安全性の指標を押さえておくことはとても重要なポイントとなります。
銀行の融資条件などにもかかわってきますし、取引先などを決める際の判断基準にも使える重要な指標ですので解説したいと思います。
安全性分析の代表的な指標として「自己資本比率(株主資本比率)」、「固定比率」、「流動比率」、「当座比率」の4つの指標があります。
この4つの安全性分析それぞれが重要な指標になりますが、4つの指標で総合的に判断することが重要です。
これらの4つの指標にはそれぞれ特徴があり、短期的財務状況と長期的財務状況の2つの側面から会社の財務状況を把握することができます。
短期的な安全性をはかる指標→「流動比率」「当座比率」
長期的な安全性をはかる指標→「自己資本比率」「固定比率」
それでは次に、各指標の特徴と計算方法についても解説していきます。
「自己資本比率」とは
「自己資本比率」は安全性分析で最も代表的な指標です。
この指標は金融機関で融資を受ける際にも非常に重要な指標となります。
自己資本比率では、会社がどれだけ返済義務のない自己資本(=自分のもの)を所有しているかがわかり、自己資本の充実がイコール会社の安全性につながります。
自己資本比率は「自己資本」と「他人資本」の数値から以下の数式で求めることができますので、実際に自社の決算書を確認し計算してみましょう。
自己資本比率 = 自己資本 ÷ (自己資本 + 他人資本 = 総資本)× 100
一般的に純資産の割合が多いほど安全であると認識され、我々キャッシュフロー経営推進全国会では、自己資本比率が30%を超えると財務体制が安定した会社であると定義しています。
この指標から会社の負債や自己資本のバランスが明確となり、長期的観点から企業の安全性を評価することが可能です。
「流動比率」とは
「流動比率」は安全性をはかるもう一つの代表的な指標となります。
自己資本比率とは異なり、短期的観点から会社の安全性を判断する指標となります。
この流動比率は財務諸表(貸借対照表)の「流動資産」と「流動負債」の数値で計算してください。
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
流動資産は原則として1年の間に現金化できる資産を表し、流動負債は1年以内に返済可能な金銭債権のことを表します。
この流動比率を計算することで会社にすぐに現金化できる資産がどれだけあるかがわかり、キャッシュフロー経営推進全国会では、この比率が180%以上の会社であれば安全であると定義しています。
例えば、100%を下回る流動比率の会社は、不動産などの資産がメインで手元に現金がなく倒産に陥る可能性があるため、注意が必要です。
「当座比率」とは
「当座比率」とは流動比率を補足するのものです。
なぜなら、前段の「流動比率」には在庫を抱えるリスクが含まれているためです。
当座比率は在庫分を含めずに計算することで流動比率よりも厳密に短期間で現金化できる資産を把握することができる指標です。
当座比率も財務諸表(貸借対照表)中の数値で求めることができます。
当座比率 = (流動資産 – 棚卸資産) ÷ 流動負債 × 100
この当座比率は一般的には150%以上であれば資金繰りが良好な会社と判断して良いでしょう。
「固定比率」とは
「固定比率」は流動比率や当座比率とは異なり、長期的な観点から会社の安全性をはかるもう一つの指標です。
固定比率も財務諸表(貸借対照表)の「固定資産合計」と「純資産合計」の数値で求めることができます。
固定比率 = 固定資産合計 ÷ 純資産合計 × 100
固定比率は簡単に説明すると、固定資産がどの程度自己資本(自分のもの)で賄われているかを示しています。
固定資産は土地など長期にわたり保有する資産のため多額のコストがかかり、長期年月をかけて収益から回収される位置づけです。
しかし、自己資本にて賄われている比率を算出することにより、長期的に安全な会社かどうかを判断することができます。
一般的に固定比率が100%を下回る方が財務構造の安定性が高いと評価され、長期的な企業の安定性をはかる指標の一つです。
まとめ
以上、企業の安全性分析について解説してきましたが、ご参考になりましたでしょうか。
専門的な用語の活用が多いですが、計算式はどれもいたってシンプルですのでまずは財務諸表を見て計算してみることをお勧めします。
可能であれば、競合先や取引先の安全性比率なども確認しておくとよいでしょう。
とはいえまずは自社の安全性を分析し理想の数値へ近づけていく努力をすることが大事になってきます。
指標について更に詳しく知りたい方や、指標の改善方法などについて知りたい方は、当社主催の財務講座に是非ご参加ください。